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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・ 米子水鳥公園におけるコハクチョウの発信器による調査神谷 要 (米子水鳥公園) [日本標識協会1999大会シンポジウム講演要旨] |
鳥類の渡りルートを調査することは、その鳥類の保護を目指す上で調査すべき重要な生態の一つである。ハクチョウ類は、大型の鳥類であるために早くからその渡りルートが注目されていた。そのためハクチョウ類の渡りルートは、発信器が使用される以前から色つきの首輪により調査されてきた。これらの調査結果として、ハクチョウ達が列島内をあちらこちらへ移動したり、列島に沿って北上・南下していく様子などが観察された。
また、ロシア・北極海沿岸のチャウ湾で首輪標識されたコハクチョウが日本各地に飛来するなど一定の成果を上げていた。しかし、越冬地と繁殖地は分かったがその間の移動ルートについては、未解明のままであった。また、日本国内の移動は、分かったがそれ以外の地域、ロシア、中国、韓国での動きは、ほとんど分かっていなかった。
これに対して、1990年代になると鳥類の渡り調査の手法として人工衛星を用いた調査が行われるようになった。これらの調査は、今まで推測の領域であった鳥類の渡りルートを明らかにした。中海においても、人工衛星を用いて米子水鳥公園(鳥取県)に飛来するコハクチョウ(Cygnus columbianus bewickii)の渡りルート(北帰)を調査したので報告する。
1994年3月と1997年3月に各4羽(計8羽)のコハクチョウに発信器(トヨコム社の T-205)を装着して渡りルートを調査した。発信器の重さは、105g(1994)と 89g(1997)で、ハーネスにより背中に装着した。
1994年の調査では、発信器をつけたコハクチョウのうち1羽が米子からウラジオストック周辺に移動し、日本海(900km)を13時間で縦断したものと推測された。別の2羽は、日本列島沿いに北上するのが観測された(図1)。
1997年の調査では、2羽のコハクチョウが日本海を真北へ移動した。このうち1羽は、ロシア・北朝鮮国境近くの豆満江周辺に到達した。別の2羽は、日本列島沿いに移動するのが観測された。また、首輪を装着したコハクチョウのうち1羽が3月23日に青森県で観察され、日本列島沿いに北上していると考えられた(図1)。
これらのことより日本で越冬するコハクチョウには、日本列島沿いに渡りを行うものだけでなく、日本海を渡る渡りを行うものがいることが分かった。
このような発信器による調査は、従来の手法だけでは分からなかったことも明らかにした。しかし、発信器による調査は、追跡できる期間が短く、金銭的・労働量などの面から多数の鳥に装着できないなどの問題も多くあるため、今後も従来のメタルリングやカラーマーキングなどの調査を継続した上で調査を行う必要がある。
図1.米子水鳥公園に飛来するコハクチョウ(Cygnus columbianus bewickii)の渡りルート(北帰)の人工衛星を用いた調査結果.
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