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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・ 鳥類学研究者グループ:JOGA 第2回自由集会
日本国内におけるガンカモ類の資源利用研究
嶋田 哲郎(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)
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国内におけるガンカモ類の資源利用研究の歴史は、4つの時代に大きく分けることができる。
- 1900年代前半 「黒田長禮. 1939. 雁と鴨. 修教社書院. 東京」
ガンカモ類のそれぞれの種について、古名、方言、漢名からはじまり、分布、羽色、個体変異、測定値、生態、飼養、雑種などが詳細に記載されている。中でも資料の少ない1900代前半のガンカモ類の生息状況を知る上で貴重な書。
- 1950〜60年代 「羽田建三. 雁鴨科鳥類の群集生態学的研究」
ガンカモ類群集を、形態(みずかき、翼面積、骨格など)と行動(日周行動、採食行動、なかま関係)からいくつかの採食型グループに分け、それらが湖の栄養段階や湖面の安全性などをもとに、すみわけている様子を見事に示した。ガンカモ研究の金字塔。
- 1970年代 「地域ごとの生態」
地域ごとに生息するガンカモ類について生態調査がなされはじめた時期。代表的なものとして、宮城県北部でなされたガン類調査(横田ら 1979,1980)、東京都不忍池で行われたカモ類調査がある(福田 1975,1977)。
- 1980年代〜現在 「環境要因の詳細な分析」
ガンカモ類の生態と環境要因の詳細な分析がなされはじめた時期。環境要因として、休息地の形態(面積、水深など 樋口ら1988, 武田1990)、植生(水生植物、水辺の樹林など/武田 1990)、水(水位、水質、積雪量など/浅間ら 1987, 杉森ら 1988, 浜端ら 1995, 村上ら 2000, Shimada et al. 2000)、食物(生息地の違いなど/Oka et al. 1999)、人為的影響(給餌、狩猟など/樋口ら1988)がある。
国内におけるガンカモ類の環境利用に関する資料
ここでは主に環境利用について論じている論文を集めました。
〜古 典〜
- 黒田長禮. 1939. 雁と鴨. 修教社書院. 東京.
〜羽田健三博士論文(雁鴨科鳥類の群集生態学的研究)〜
- 羽田健三. 1952. 湖沼の生産量の指標する雁鴨科鳥類の棲み分けについて(予報). 陸水学雑誌. 16: 96.
- 羽田健三. 1954. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける生態・Kineto-adaptation並びにAllometryに関する研究. I. 湖沼標式を指標する群集としての棲み分けについて. 信大教育学部研究論集 4: 139-158.
- 羽田健三. 1955. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける生態・Kineto-adaptation並びにAllometryに関する研究. II. 雁鴨科鳥類集団の社会生態学的研究ーすみわけ構造の解析を中心としてー. 信大教育学部研究論集 5: 39-70.
- 羽田健三. 1956. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける生活形に関する研究. I. みずかき膜について. 信大教育学部研究論集 7: 185-201.
- 羽田健三. 1957. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける生活形に関する研究. II. 翼面積. 動物学雑誌 66(12): 453-456.
- Haneda, K. 1961. Studies on the life form of the geese and ducks living in the inland waters. III. The muscles weight distribution. Bull. Fac. Educ. Shinshu Univ. 10:104-111.
- 羽田健三. 1957. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける群集生態学的研究. I. 青木湖. 信大教育学部紀要 7: 107-124.
- 羽田健三. 1960. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける群集生態学的研究. II. 木崎湖. 信大教育学部紀要 9: 65-80.
- 羽田健三. 1959. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける群集生態学的研究. III. 野尻湖. 信大教育学部紀要 8: 105-114.
- 羽田健三. 1959. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける群集生態学的研究. IV. 諏訪湖. 信大教育学部研究論集 10: 83-95.
- 羽田健三. 1958. 内水面に棲息する雁鴨科鳥類における於ける群集生態学的研究. V. 六義園池. 信大教育学部研究論集 9: 175-183.
- 羽田健三. 1958. 西南日本湖沼群に棲息する雁鴨科鳥類集団に於ける群集生態学的研究. 信大教育学部研究論集 9: 185-197.
- Haneda, K. 1961. Studies of the group formation of the geese and ducks living in the inland waters. Bull. Fac. Educ. Shinshu Univ. 12: 17-25.
- 羽田健三. 1962. 内水面に生活する雁鴨科鳥類の採食型と群集に関する研究. XIII. 雁鴨科鳥類の食物. 生理生態 10(2): 98-129.
- 羽田健三. 1962. 内水面に生活する雁鴨科鳥類の採食型と群集に関する研究. XIV. 雁鴨科鳥類の群集. 信大教育学部紀要 12: 63-85.
- 羽田健三. 1963. 内水面に生活する雁鴨科鳥類の採食型と群集に関する研究. XV. 雁鴨科鳥類の採食型. 信大教育学部研究論集 14.
- 羽田健三. 1961. 内水面に生活する雁鴨科鳥類の採食型と群集に関する研究. XVI. 総括 雁鴨科鳥類の生活と進化. 信大教育学部紀要 11.
〜主要国内雑誌に掲載された論文〜
Ecological Research, Journal of Ethology, 日本生態学会誌, 日本動物行動学会誌, 日本鳥学会誌, 山階鳥類研究所報告, 応用鳥学集報, Strix, 関西自然保護機構会報など
(ハクチョウ類)
- 阿部学. 1968. ハクチョウ類に関する2、3の知見並びに尾岱沼におけるハクチョウ多数弊死の実状と対策試案. 鳥 18
- 林俊夫. 1982. 諏訪湖に飛来のコハクチョウ(Cygnus columbianus jankowskii)のbill patternによる個体識別について. 鳥 31: 1-16.
- Brazil, M. A. 1984. Winter Feeding Methods of the Whooper Swan (Cygnus cygnus) . J. Yamashina Inst. Ornith. 16: 83-86.
- 飯嶋良朗. 1984. オオハクチョウの奇妙な食性(英文). 鳥 33: 80-81.
- 樋口広芳・佐藤文男・松井繁・相馬正樹・冠昇. 1991. 人工衛星を利用したコハクチョウの渡り追跡. 山階鳥研報. 23: 6-12.
- 浜端悦治・堀野善博・桑原俊雄・橋本万次. 1995. 琵琶湖でのコハクチョウの採食場所の移動要因としての湖面水位. 関西自然保護機構会報 17: 29-41.
- 金井裕・佐藤文男・植田睦之・ジェイソン ミントン・樋口広芳・相馬正樹・三田長久・松井繁. 1997. オオハクチョウの渡り経路と重要な中継地(英文). Strix 15: 1-12.
(ガン類)
- 横田義雄・西出隆. 1974. 伊豆沼の雁の帰北コースについて. 山階鳥研報. 7: 309-323.
- 横田義雄・星子廉彰・武石全慈・西出隆. 1976. 伊豆沼の雁の帰北コースについて(II):石狩平野の雁. 山階鳥研報. 8: 38-52.
- 横田義雄・呉地正行・小杉眞理子. 1979. 越冬ガンの個体群行動の研究. I. 伊豆沼・越冬ガンの羽数調査. 鳥 28: 29-52.
- 横田義雄・呉地正行・小杉眞理子. 1980. 越冬ガンの個体群行動の研究. II. 伊豆沼・越冬ガンの採餌地の分布. 鳥 29: 7-33.
- 呉地正行・横田義雄・大津眞理子・小野登志和・星子廉彰. 1982. 伊豆沼越冬マガン群の新渡去経路:サカツラガンの追跡調査に基づく新知見. 鳥 30: 165-167.
- 横田義雄・呉地正行・大津眞理子. 1982. 日本のガンの分布、羽数および生息状況. 鳥 30: 149-161.
- 呉地正行・福田佳弘. 1983. 渡りの中継地におけるマガンおよびヒシクイの交尾行動の観察(英文). 鳥 32: 153-154.
- 呉地正行・大津眞理子. 1983. 越冬地におけるガン類の環境収容力の推定(1)マガンのエネルギー要求量. 応用鳥学集報 3: 5-7.
- 呉地正行・横田義雄・大津眞理子. 1983. ヒシクイ Anser fabalis serrirostris とオオヒシクイ A. f. middendorfi の野外識別についての考察. 鳥 32: 95-108.
- 沼地健一・和多田正義・柿澤亮三・黒田長久・内田清一郎. 1983. ガンカモ科の進化遺伝学的研究(英文). 鳥 32: 63-74.
- 嶋田哲郎. 1997. 伊豆沼北東部の水田地帯におけるマガン Anser albifrons の渡去期の生態-朝夕の飛び立ち行動と日中の活動状況-. 日鳥学誌 46: 7-22.
- 千葉晃・渋谷信雄・本間隆平. 1999. 新潟県福島潟において発見された急性鉛中毒症のオオヒシクイに関する記載(英文). 日鳥学誌 47: 87-96.
- 嶋田哲郎. 1999. 伊豆沼・内沼周辺の水田における稲刈り法の違いによるガン類の食物量の比較. Strix 17: 111-117.
- 村上悟・清水幸男・上野健一. 2000. 滋賀県北部におけるオオヒシクイ個体数の年次変動と環境要因. 日鳥学誌 48: 219-232.
- 嶋田哲郎. 2000. 伊豆沼・内沼周辺における標識マガンの動向. Strix 18: 105-109.
(カモ類)
- 黒田長禮. 1960. ホオジロガモの食性. 鳥 15: 35-36.
- 福田道雄. 1975. 不忍池に飛来する鴨類に関する調査. I. 1973年度冬期間の飛来状況について. 鳥 24: 29-44.
- 福田道雄. 1977. 不忍池に飛来する鴨類に関する調査. II. 1974年度-1976年度冬期間の飛来状況. 鳥 26: 105-114.
- 城所隆. 1984. カルガモによる水稲の被害と防鳥危惧の効果. 応用鳥学集報 4: 31-36.
- 呉地正行・山田和彦. 1984. シノリガモ Histrionicus histrionicus の筋胃内容物について. 鳥 33: 78-79.
- 佐藤広巳・小湊郁夫. 1988. 栗駒山麓一迫川におけるシノリガモの繁殖とその生態. Strix 7: 159-176.
- 杉森文夫・松原健司・岩渕聖. 1989. 手賀沼に飛来するカモ類の環境利用と水質汚濁の関係. 山階鳥研報 21: 234-244.
- 武田恵世. 1990. カモ科鳥類の越冬する池の条件. Strix 9: 89-115.
- 嶋田哲郎. 1992. ハシビロガモ Anas clypeata による小魚の捕食. Strix 11: 343-344.
- 嶋田哲郎. 1992. 市川市沖におけるカモ科Anatidae鳥類の個体数変動. Strix 11: 211-217.
- 嶋田哲郎・桑原和之. 1997. 千葉県市原市養老川河口域におけるホシハジロとスズガモの分布. Strix 15: 83-87.
- Oka, N., Yamamuro, M., Hiratsuka, J. and Satoh, H. 1999. Habitat selection by wintering tufted ducks with special reference to their digestive organ and to possible segregation between neighboring populations. Ecological Research 14: 303-315.
- 山本浩伸・大畑孝二・山本芳夫. 1999. 石川県加賀市の水田地帯における越冬期のカモ類の環境選好性―片野鴨池に飛来するカモ類の減少を抑制するための試み―. Strix 17: 127-132.
(ガンカモ全般)
- 浅間茂・山城隆. 1987. ガンカモ類とCOD値との関係. Strix 6: 96-102.
- 樋口広芳・村井英紀・花輪伸一・浜屋さとり. 1988. ガンカモ類における生息地の特性と生息数との関係. Strix 7: 193-202.
- 大畑孝二・下野伝吉・丸谷聡. 1998. 加賀市片野鴨池における休息用人工物設置の水鳥類の利用について. Strix 16: 127-133.
- Shimada, T., Bowman, A. and Ishida, M. 2000. Effects of flooding on a wetland bird community. Ecological Research 15: 229-235.
〜渡来地目録〜
- 宮林泰彦(編). 1994. ガン類渡来地目録. 第1版. 316pp. 雁を保護する会, 若柳.
[JOGA第2回自由集会「日本のガン,カモ,ハクチョウ類の環境利用」2000年9月17日]
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「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」は
国際湿地保全連合が 「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」に基づいて 提唱している国際協力プログラムです.
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国際湿地保全連合日本委員会 ガンカモ類フライウェイオフィサー 宮林 泰彦, 989-5502 宮城県 栗原郡 若柳町 字川南南町16 雁を保護する会 TEL&FAX 0228-32-2592 / E-mail: yym@mub.biglobe.ne.jp.
このページは「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 2000年9月11日掲載.
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