[ 重要生息地ネットワーク ]

[ 日本鳥学会 ]

[ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

JOGA Logo (21KB)

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA 第2回自由集会

マガンの採食地利用と農業被害問題:
北海道宮島沼における小麦食害問題と代替採食地による防除

牛山 克己 (東大・農・生物多様性)

[ Index ] [ Back ]


 近年、世界各地でガン類による農業被害問題が顕在化している.ガン類による農業被害問題への対策として、被害作物の物理的防除、農家への補償制度、狩猟による個体数管理など、様々な方策が思案され、実行に移されている.しかし、それらの多くは対処療法的なものであり、長期的、または、短期的にも十分な効果をあげることは難しく、また、ガン類の保全管理を考える上でも不十分であった.ガン類の適切な保全管理をも考慮し、長期的な視点で農業被害対策を実行するためには、ガン類の採食地利用に関する研究が不可欠である.
 ガン類の採食地利用に関する研究が、農業被害対策に応用的に役立てられている例として、北海道美唄市における取り組みをあげる.

figure (16KB)

図.代替採食地の位置(1 - 4).黒の塗りつぶしは防風林.
 北海道美唄市に位置する宮島沼は、日本で越冬するマガンの重要な寄留地であるが、春期のおわりに大規模な小麦食害が発生し、問題となっている.春期のおわりには、マガンの主要食物である落ち籾がマガンによる採食、藁焼き、圃場の耕起などによって減少しており、一部地域では小麦が相対的に良い採食地となり、小麦食害が発生すると考えられる(牛山 1999).従って、それら地域で安価なクズ籾を散布して代替採食地とし、マガンを誘引することによって小麦食害を軽減することができると考えられた.
 2000年度4月25日に宮島沼付近の4ケ所に代替採食地を設置した.その後、代替採食地と周囲の圃場のマガンの分布と行動等の記録をとった.マガンは、3ケ所の代替採食地を利用した.代替採食地は設置後2〜3日からマガンが利用しはじめ,その後2〜3日で個体数が最大になり,3日〜5日で放棄した.マガンは道路や防風林から遠い圃場から利用しはじめ,徐々に防風林や道路に近い圃場を利用するようになった.また,防風林や道路に近い圃場ほど利用期間が短い傾向があった.
 代替採食地のモニタリング結果から、代替採食地を有効に機能させるための提言と今後の課題をあげる.また、代替採食地の設置がマガンの個体群に及ぼしうる影響を検討し、今後ガン類と食害問題を解決するために目指すべき研究の方向性をあげる.

[JOGA第2回自由集会「日本のガン,カモ,ハクチョウ類の環境利用」2000年9月17日]

[ Index ] [ Subject ] [ Top ] [ Back ]

[ 重要生息地ネットワーク ]

[ 日本鳥学会 ]

[ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

「戦略」ロゴ (10KB)

「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」は
国際湿地保全連合のロゴマーク (7KB)
国際湿地保全連合が
「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」に基づいて
提唱している国際協力プログラムです.

国際湿地保全連合日本委員会 ガンカモ類フライウェイオフィサー 宮林 泰彦, 989-5502 宮城県 栗原郡 若柳町 字川南南町16 雁を保護する会 TEL&FAX 0228-32-2592 / E-mail: yym@mub.biglobe.ne.jp.

このページは「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 2000年9月11日掲載.