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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・ 餌内容調査から見るコハクチョウの生態:
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<餌内容の把握から始まる研究の発展性>
鳥の、野外における餌内容やその摂取量を把握することは、それぞれの種の生態を把握したり保護を考えていったりする上で非常に重要であると考えられる.しかし、サイズの小さい種類の場合、直接観察では餌内容を把握することは難しく、また、近年では、野生の鳥を捕獲して胃内容を剖検することもサンプルを得ることが困難である.
しかしながら、餌内容が把握されることにより、様々な方向へ研究を発展させてゆくことが可能となる.たとえば近縁種どうしの餌内容の違いや棲み分け、エネルギー収支、同種間の餌を巡る競争、餌となる動植物との競争や共生関係の把握などである.
<餌内容を把握しやすい越冬期のガン・ハクチョウ類>
日本列島で越冬するガン・ハクチョウ類は、『分布の限られた数の少ない鳥』というイメージが強いようである.しかし、多くが昼行性と思われること、体のサイズが大きいこと、資源の種類が限られると考えられる冬にしかいないこと、など、餌内容を非常に把握しやすい鳥、という一面をもっている.演者らは直接観察法と食痕観察法により、ガン・ハクチョウ類の餌内容を調査した.今回は越後平野の水田と宮城平野、越後平野、関東平野などの池沼で得られたコハクチョウの食物リストから2つ話題を提供する.
<越後平野のコハクチョウと水田環境の変化>
越後平野で越冬するコハクチョウは、主に潟沼で就塒し、昼の間は刈田に小群で展開して過ごす.刈田では、あまり休息することなく、終日活発に採食する.餌内容は、越冬期前半が刈田の水田面に散乱する落ち籾、越冬期後半は水田面に自生する越年性の草本である.かつて強湿田地帯であった越後平野は、現在、用排水路、農道の完備した乾田となっており、ほとんどの場所でコンバインを使った稲刈りがなされている.落ち籾、越年性の草本はそれぞれ機械化と乾田化によって増加したと考えられる.越後平野の水田地帯に、コンバインの導入がほぼ完了した1986年頃から、コハクチョウの個体数が急増しているのは興味深い.
<コハクチョウとマコモの共生関係>
関東平野におけるコハクチョウの越冬地は限られているが、茨城県菅生沼、群馬県多々良沼ではそれぞれ約200羽、170羽が越冬する.両沼とも給餌が行われているが、越後平野と異なりこの両沼で越冬するコハクチョウが主食としているのは、マコモの地下茎である.非常に強い食圧を受けながらも群落を維持する能力を持つマコモの特性を、ヨシ、ヒメガマなどと比較しながら考察する.
[JOGA第2回自由集会「日本のガン,カモ,ハクチョウ類の環境利用」2000年9月17日]
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