ハンカイスキー国立自然保護区域ハンカイスキー国立自然保護区域
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ハンカイスキー国立自然保護区域は、プリハンカイスキー平野(ハンカ湖沿い平野)の中心部に位置し、北緯 45度,東経 132〜133度、面積は 37,989ヘクタールです。その地形は、主に草のおい茂った沼、草原、ヨシのやぶや浅い湖です。自然保護区は保存地区のほか、経済活動制限区域、経済活動禁止区域のような様々な自然保護体制のある緩衝地帯があります。それを含めて保護地域と保護水域の総面積は11万ヘクタール以上です。
ハンカイスキー自然保護区域やその緩衝地帯では、330種類の鳥類が観察・記録され、そのなかでも絶滅危機にさらされる鳥が大半を占め、ロシア級レッドブック記載の鳥は44種類、国際級レッドブック記載の鳥は12種類です。当自然保護区の、珍しい鳥を含む鳥類の数は、ロシア連邦の同面積自然保護区域に比べても、またヨーロッパやアジアの温暖気候帯自然保護区域に比べても多い方です。当保護区域では哺乳類動物が43種類観察・記録され、その内国際級レッドブック記載動物は 2種類、ロシア級レッドブック記載動物は 2種類です。他にロシア級レッドブック記載動物は魚類 2種類、爬虫類 1種類です。当保護区域は、水生植物、湿原植物や草原の植物保護のため、大事な役割を果たしています。保護区域に生える維管束植物は、ロシア級レッドブック記載植物が 9種類、その他に沿海地方において珍しいとされる植物や絶滅危機にある植物が多くあります。 ハンカ湖は、ロシアの極東地域において最大の淡水湖です。しかしその面積は広いものの、かなり浅い湖です。中水位での面積は 4,070平方キロメートル、平均深度は約4〜5メートル、最大深度は10メートルです。当湖の深さは、平均として26年毎に変わる特徴があります。その深浅の差は 210センチメートルに及びます。この変化のたびに面積が 17%、水量が 39%増減します。 当保護区域では、1993年から動植物群及び特定の数種類の生態に関する年間データを記録し、自然の年代記を作成しています。これによって自然の法則性が明確化され、人間の活動から影響を受ける動植物群の比較研究が行われています。また自然の多種多様性を保護、自然資源の最適利用の化学的基盤が確保されています。当自然保護区域職員は、環境教育を行い、様々な徒歩見学旅行、遊覧ツアーや自動車ツアーの案内をします。 |
タンチョウ Grus japonensis |
ハンカ湖沿岸にこのようなユニークな鳥の世界があるおかげで、当地にこの自然保護区域が開設されました。この地は珍しい鳥や絶滅危機にある鳥が巣作りまたは渡りをするところとしてだけではなく、水鳥や水辺の鳥が渡りをするとき大きい群を成して休憩するところとして知られています。渡りの休憩をするカモの群は、日によって数十万羽に及びます。当保護区域に見られる珍しい鳥の中でも、一番面白い鳥はたぶん鶴でしょう。ここで観察できる鶴は 4種類とも国際級レッドブックに記載されています。その内ソデグロヅル(Grus leucogeranus)とナベヅル(Grus monachus)はこの地に渡りだけをするのに、マナヅル(Grus vipio)とタンチョウ(Grus japonesis)は保存地区に巣を作ります。タンチョウは当自然保護区域のシンボルとされ、その姿は自然保護区域の紋章に描かれています。
マナヅル Grus vipio |
タンチョウはロシアで生息するツル科のなかでも体が一番大きいものです。そのため、多数の猛獣に立ち向かうことができます。その体重は12キログラム、全長 170センチメートルに及びます。タンチョウの色彩は主に純白ですが、首と翼の縁が黒色、頭に赤い帽子をかぶっています。
タンチョウ Grus japonensis |
この優美な鳥を見るとき、思わず明るくほほえまずにはいられません。日本人にとってタンチョウは、神聖な鳥であり、その姿は伝統的美術に紋章化されています。タンチョウは極東地域だけに分布し、世界で 1,000羽あまりしか生息していません。
コウノトリ Ciconia boyciana |
コウノトリはヨーロッパに生息する鳥としてよく知られたシロコウノトリ(Ciconia ciconia)のもっとも近縁の親戚です。しかしその仲間と違って滅びゆく動物とされ、国際級レッドブックに記載されています。極東コウノトリはシロコウノトリに比べて体が大きく、くちばしが黒く、羽の色彩が異なります。極東コウノトリは大変用心深い鳥で、へんぴで開発されていない地域に巣を作ります。巣にいるときもかなり臆病で、人の姿を見ると巣を離れます。コウノトリが巣作りをする地域は近年ロシアと北東中国にかぎられます。日本では1959年、朝鮮半島では1971年頃から巣作りをしなくなりました。それにひきかえ、当自然保護区域開設以来、鳥が住んでいる巣の数が年々増えていくことは喜びにたえません。
アゲハモドキ | アムールヤマネコ |
コマロフハス Nelumbo Komarovii |
ハスの主な分布圏は、東南アジアやオーストラリアですが、ロシアでは沿海地方,ハバロフスク地方やボルガ川河口三角洲に分布しています。この植物の分布圏が広くばらばらであることは、この種の起源が遠い昔にあることを裏付けています。ハンカ湖のハス開花期は、8月中ごろです。3〜4日間ハスの花は毎朝開いて、夕方に花弁を閉じます。ハスの花は老化に伴って、その色彩が薄くなり、鮮かなピンク色から白色へと変化します。ハスの花が常に太陽の方を向いていることは、東洋の国々では神聖視されていることの主な理由です。
オニバス Euryale ferox |
オニバスは第三紀の生き残り植物です。東南アジアやロシア国内のウスリー川とイリスタヤ川沿いの低地に分布します。この植物は葉に鋭いとげがあるので恐ろしいと名づけられました。エウリアラの葉はだ円形で直径130センチメートルに及び、表は鮮緑色、裏は赤紫色で、常に水面に浮かんでいます。その花はワイングラスの形をしていて、朝は水面に浮かび上がり、その後沈みます。果実も水中で熟します。
ササゴイ Butorides striatus |
ササゴイは自然保護区域の珍しい鳥です。この短足で小型の鳥はサギ科に属し、クワウクワウと高い声で鳴くのが特徴です。ササゴイは夜行性なため、その観察はきわめて困難です。夜巣に帰ってくるときでも、ひなに対して頭で帰宅の合図をします。この種がロシア極東地域に巣を作ることは、この10年間で 1件しか確認されていなかったのですが、当自然保護区域では1994年に雄雌15組程、1996年には30組以上も見られました。
カオジロダルマエナガ |
1968年ハンカ湖岸のアシ原で不思議な鳥が発見されました。それはロシアの動物として知られていなかったカオジロダルマエナガです。この鳥が巣を作るロシアの地域はハンカ湖周辺のみで、生息数が営巣する雄雌200組余りです。この種はロシア級や国際級レッドブックに記載されています。
カワリサンコウチョウ |
ハンカ湖沿岸沼地は、様々な鳥が巣を作ったり、渡りをしたりする、珍しい草原や沼沢植物が生えるユニークな自然地域です。この地域において自然保護区域の開設が必要であることは、1920年代にはじめて指摘され、結果として1990年、沿海地方で最も新しいハンカイスキー国立自然保護区域が開設されました。1971年ラムサ−ル条約により、この地域は国際指定湿地となりました。1996年4月ロシア政府と中国政府との間で、ロシアのハンカイスキー国立自然保護区域と中国の興凱湖自然保護区域をもとに「ハンカ湖」露中国際自然保護区域開設について協定が締結されました。
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鶴舞外見を見れば雄雌見分けのできない二羽の鳥は、突然蛙狩りをやめてくちばしを向け合います。一羽は、相手に向かって首を曲げながら伸ばしたりしておじぎをします。この姿勢で頭と首を上下に少しだけ振ります。そして雄は、翼をたたいて、踊るように雌の周りを歩きます。そのテンポは周回ごとに上ります。そして次に二羽は、向かい合って翼をたたきながら跳びます。跳びあがるときは、左足をやや上げて、精力的に蹴ります。鳥はときどき2メートルも跳びあがって、空を飛ぶように翼を大きく広げます。特に高く跳びあがったら、肩を並べてゆっくりと優雅に滑空して40メートル離れたところに着陸します。踊りは普段これで終わります。鳥は身体を振って、さっそうと野原を歩き回ります。 マナヅル Grus vipio には、ほかに三つの奇妙な踊りの動きがあります。その鶴は踊りながら、地面の小枝、枯草の茎、種、紙の小片その他小さい物をくちばしではさんでほうりあげます。二番目は、鳥は羽を大きく広げて相手に背を向けて跳びます。そのとき、鶴の白い羽はその黒い帯と対照を成しよく見えます。ときには、鶴が向かい合ったまま動かなくなり、首を上の方へ伸ばしてくちばしを胸に押しつけ、頭上の赤帽を見せ合います。翼は少し上げたままです。そしてくちばしを空の方へ上げて、切り裂くような鳴き声を出します。鶴は普段カップルで踊る場合は静かですが、群ごと踊る場合は、鳴き合って互いに元気づけます。 イゴル・アキムシキン Igor Akimushkin |