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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA 第1回自由集会

滋賀県湖北地方におけるオオヒシクイの個体数変動要因

村上 悟(滋賀県立大学大学院)

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Fig 1 (1KB)

図1.滋賀県北部での平均個体数(横軸)と,滋賀県北部の冬季平均気温との相関図.相関係数 r=-0.854.ただし,1983/84の値は異常値として×で示し,相関係数の算出には用いていない.

Fig 2 (1KB)

図2.滋賀県北部での平均個体数(横軸)と,琵琶湖の水位の越冬期間平均値との相関図.相関係数 r=-0.669.

 滋賀県湖北地方はオオヒシクイ(Anser fabalis middendorfi)の南限越冬地となっている。オオヒシクイの個体数の年々変動と,気温・積雪域の変動および琵琶湖の水位変動との関係を統計的に評価することを目的として研究を行った。

 滋賀県北部および全国におけるオオヒシクイの個体数(以下「個体数」)と,気温,積雪,琵琶湖の水位について1982年から1997年のデータを利用した。解析は主に単相関分析と重回帰分析を行った。以下に主な結果をまとめる。

  1. 滋賀県北部の冬季(12月から2月)平均気温は,全国的な冬季平均気温・積雪域の広がりと強い相関があり,滋賀県北部での個体数と負の相関がある(図1)。

  2. 琵琶湖の水位は,滋賀県北部での個体数と負の相関がある(図2)。

  3. 滋賀県北部の冬季平均気温 T と琵琶湖の水位 の越冬期間平均値W を説明変量,個体数 N を目的変量として,1%水準で有意な次の多重回帰式が得られる(図3)。
    N = - 51.5 t - 0.897 w+ 298.0

Fig 3 (4KB)

図3.多重回帰式から求めた平均個体数の推測値と実測値.

 以上の結果から,滋賀県北部におけるの個体数の年々変動の原因は,1)全国的な気温の低下と積雪域の拡大がオオヒシクイの移動を促して滋賀県北部での個体数を増加させること,2)琵琶湖の水位の上昇によって滋賀県北部におけるオオヒシクイの採食環境が悪化し,オオヒシクイが滋賀県北部から他の湿地へ移動して個体数が減少すること,であると考えられる。

 したがって,各渡来地におけるガンカモ類の個体数の変動要因を考える際には,目につきやすい人為的な環境変化だけでなく,気象現象などの影響によって水鳥が渡来地間を移動することを加味する必要がある。そしてその影響の評価には各渡来地での生態調査とともに,渡来地間の協力による全国的な個体数のデータセット構築が必要であると考える。

[JOGA第1回自由集会「日本のガン・カモ・ハクチョウ類の個体群の現状」1999年10月9日]

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このページは「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 1999年8月7日掲載, 9月25日更新(図面3葉 from 著者).