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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA 第3回自由集会 事例報告1

デコイ(カモ類捕獲用ケージ)によるカモ類の標識調査

−換羽がわかれば、何かがわかる!−

神谷 要((財)中海水鳥国際交流基金財団)

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●環境保全の現場から

図2+3 (36KB)

図3.デコイの終端.追い込んだ鳥をここから取り出す.

図2.デコイの入口.図1の観察小屋より撮影.右後方は水鳥公園のセンター.

図1 (13KB)

図1.デコイの平面図.

 鳥取県の米子市にある米子水鳥公園は、コハクチョウをはじめとするガンカモ類の飛来地環境を保全した場所であり、東アジアガンカモ類重要飛来地ネットワークにも登録されている(米子水鳥公園HP参照)。
 2000年より、同公園ではデコイ(カモ類の捕獲用ケージ)を設置し標識調査をはじめた。このケージは、ヨーロッパでは伝統的な捕獲方法で、カモ類の飛来する池の岸辺に水路を設け、その上にビニールハウスのパイプを組んだものである(図1)。水路は奥に行くにしたがって細く曲がり、入り口からケージ内に進入する水鳥にはケージの奥が見えない(図2)。
 カモ類を入り口に誘引し、人がケージの奥に追い込んで捕獲する。ケージの奥は陸になっており、二重の扉をもちいて人間は水に入らずとも容易に捕獲できる(図3)。
 ケージへのカモ類の誘引は餌により行なうが、餌を用いなくても水路にコガモなどが入ってくる。むしろ、誘引のために餌を撒くとオナガガモばかりがケージに入る。このため、ヨーロッパでは、モビングの習性を利用して犬を使った捕獲を行なっている。
 米子水鳥公園では、全長約50mのデコイを設置している。2000年度は、デコイを用いて約100羽の捕獲を行なった。これにより、カモ類の識別に対して大きな変化が見られるようになった。このような成果を元に今後の展開を紹介する。

●雌雄識別の意識が変わった

○雌雄の識別について

現在問題となっている環境ホルモンの影響などを調べるときに雌雄の同定からその調査が始まる。しかし、一般的にエクリプス期を過ぎたガンカモ類は容易に性が判別できるように思っている調査員が多かったが、当年生まれのオスはメスに大変に似た羽色をしているので、遠方の個体数を安易にカウントして性比を出すことをしなくなった。

●今後、考えられる観察テーマ

○性比からわかること…・

カモの婚姻関係を調べる際に性比が、基礎データーとなる。
環境ホルモンによる性比の乱れの推測。

○幼鳥と成鳥の識別について

長期的観察から個体群の再生産構造図の推測ができる。
毎年、幼鳥の個体数と生存曲線から飛来する推定個体数が出せる。
個体群の増減の判定・飛来数の予測に用いて、個体群の管理に利用できる。

●捕獲されるカモ類に対する課題

 ケージで捕獲される鳥は、総排泄口による性判定・換羽による年齢判定が容易であることが利点である。一方、その種の全体の中で均質な抽出であるかどうかの検討が課題となる。例えば、餌によりケージに誘引した場合、弱い個体や、若鳥が多く集る可能性がある。

[JOGA第3回自由集会「越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動」(その1) 2001年10月6日]

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国際湿地保全連合が
「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」に基づいて
提唱している国際協力プログラムです.

国際湿地保全連合日本委員会 ガンカモ類フライウェイオフィサー 宮林 泰彦, 989-5502 宮城県 栗原郡 若柳町 字川南南町16 雁を保護する会 TEL&FAX 0228-32-2592 / E-mail: yym@mub.biglobe.ne.jp.

このページは「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 2001年8月13日掲載.