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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA ガンカモネットワークにおけるトモエガモプロジェクトの活動について田尻 浩伸(財団法人日本野鳥の会・加賀市鴨池観察館) |
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2003年、「アジア太平洋地域渡り性水鳥保全委員会・ガンカモ類作業部会」は、「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画:2001−2005」の優先行動のひとつ(行動5)に基づき、「Baikal Teal Task Force(以下BTF)」と英語で呼ばれるプロジェクトチームが設立された。BTFは東アジア地域でのトモエガモの保全活動を推進し、保全活動計画を策定することを目的としている。メンバーは韓国、モンゴル、ロシア、中国、日本から参加しており、日本からは田尻が参加している。
本自由集会では、2003年、2003年に開催されたBTFミーティングの際に検討され実施した日本、韓国合同のトモエガモカウント調査の結果やその過程で把握できた国内の重要な渡来地について報告する。
また、保全計画を策定する上で必要と思われる情報について紹介したい。
国内の情報は各地の研究者、調査者、バードウォッチャーに提供をお願いしたほか、日本野鳥の会各支部報や自然愛好団体の会報などからも情報を収集した。韓国の情報は、現地の研究者のカウントデータ(2004年)のほか、韓国環境省が実施する水鳥カウント調査報告書(2005年)から引用した。
2004年1月には、日本と韓国で合計 660,269 羽のトモエガモが記録され、99.7%が韓国での記録であった。2005年には総計 333,640 羽が記録され、韓国での記録は 99.5%を占めた。2006,2007年は国内の情報しか得られていないが、それぞれ 774 羽、2,723 羽が記録された(図1、2)。
図1.日韓合同トモエガモカウント調査結果(左:2004年1月、右:2005年1月)
2004年1月には、韓国 Guem 川河口で 60万羽、Dongrim 貯水池で9万羽が記録され、2005年1月には Gocheonum 湖で 13万羽、Keum 川湖で9万羽が記録された。
図2.日韓合同トモエガモカウント調査結果(韓国のデータは未入手、左:2006年1月、右:2007年1月)
2006年1月には片野鴨池で 578 羽、2007年1月には鶴岡市 下池で 453 羽、木曽川立田大橋上流で 237 羽が記録された。
2004年から2007年までの1月中旬のカウント調査でお寄せいただいたデータを元に、50羽以上のトモエガモが記録された湿地を年ごとに抽出した。抽出された湿地は24箇所で、片野鴨池は毎回、河北潟、木曽川立田大橋上流、佐潟、鶴岡市・下池、福島潟、朝日池、米子水鳥公園は2回、伊豆沼、頸城大池・小池など16湿地は1回の調査で50羽以上が記録された(表1)。これらの湿地、とくに大きな群れが記録された湿地や複数回抽出された湿地は、国内のトモエガモの越冬地として重要であると考えられる。
2004年 (2129 羽) | 2005年 (1657 羽) | 2006年 (774 羽) | 2007年 (2723 羽) |
朝日池 616 羽 |
河北潟 491 羽 |
片野鴨池 578 羽 |
頸城大池・小池 746 羽 |
米子水鳥公園 420 羽 |
新拓遊水池 330 羽 |
河北潟 70 羽 |
鶴岡市 下池 453 羽 |
今津干潟 335 羽 |
木曽川 立田大橋上流 157 羽 |
北印旛沼 54 羽 |
朝日池 263 羽 |
小野湖 191 羽 |
鶴岡市 下池 83 羽 |
佐潟 52 羽 |
木曽川 立田大橋上流 237 羽 |
和白干潟 186 羽 |
信濃川 与板橋−分水堰 80 羽 |
伊豆沼 104 羽 |
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片野鴨池 75 羽 |
福島潟 78 羽 |
米子水鳥公園 92 羽 |
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多礼ダム 56 羽 |
片野鴨池 73 羽 |
白川 八城橋下流 87 羽 |
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福島潟 50 羽 |
吉田ダム 86 羽 |
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宍道湖西岸 斐伊川河口 85 羽 |
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江内川河口 67 羽 |
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4回 | 小瀬川貯水池 65 羽 |
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3回 | 片野鴨池 62 羽 |
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2回 | 佐潟 58 羽 |
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1回 | 鏡ダム湖 54 羽 |
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小浜湾 54 羽 |
トモエガモは年ごとの飛来数の変動が大きいことが知られているが、複数回抽出された湿地は比較的飛来頻度の高い重要な湿地であると考えられる。
また、越冬期間中にも良く移動する種であることから、年に1回の調査では偶然少数しか記録されず、トモエガモの越冬地としての重要性を過小評価する可能性がある。そこで、日韓合同の調査時以外の観察記録も収集し、50羽以上が飛来した湿地を抽出した。合同調査の結果からは抽出されなかった福井県大堤、滋賀県琵琶湖(湖北町)、山口県きらら浜、佐賀県新籠海岸、宮城県蕪栗沼、福島県藤沼湖で 100羽以上、高知県蟹ヶ池、宮崎県御池、福井県菅湖で50羽以上が記録された。
トモエガモの保全行動計画は、当初は2004年度末に策定される予定であったが、筆者(田尻)の力不足以外にトモエガモに関する基礎的な情報が少なかったことも原因し、現時点では策定されていない。トモエガモの国際的な保全計画を策定する上で、必要と思われる情報について、BTFミーティングの際に各メンバーから出された意見を元にまとめ、その後国内での保全を考える上で必要と思われる調査の内容についてまとめた。
ほかに、関係者のネットワークの構築や教材の制作の必要性があげられており、現時点では関係者間での情報共有やネットワークの構築を行いつつ、具体的な保全計画の策定のため、トモエガモの生態に関する基礎的な情報を収集していく必要があると考えている。
以下、特に日本国内で必要と思われる調査、実施できる調査について述べる。
他にも明らかにしておくべきこと、留意すべきことがあると思われるので、参加されている皆様からの意見をいただければ幸いである。
[JOGA第9回集会「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの発足と協力」2007年9月21日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg012e.htm
2007年9月13日掲載,9月16日更新(図の画像ファイルのグレードアップ等),JOGA.