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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第11回集会「急増するガン・ハクチョウ・カモ類の原因や影響を巡る鳥学的課題」
講演3−3
橋本 啓史(名城大学)・須川 恒(龍谷大学)
日本一の面積を持つ湖沼である滋賀県・琵琶湖の湖岸は,特に冬期はカモ類を始めとする約14万羽もの水鳥の採食・休息場所として利用されており,水鳥等にとって重要な生息地となっている.
琵琶湖の湖岸における越冬水鳥の個体数は,南湖では1973年から,南湖と北湖を合わせた全湖では1989年,1994年および2007年に船を使った調査が行われている.年次変動は評価できないものの,その調査結果から,南湖では最近35年間,全湖では最近20年間の水鳥の個体数の増減の傾向を知ることができる.
図1.マガモ属(その2)の年変化
図2.ハジロ属の年変化
図3.オオバンの年変化
近年,越冬個体数の顕著な増加が見られる種は,マガモ属のうちでも水草を主に採食するヒドリガモ,オカヨシガモ,ヨシガモ,湖底の貝類や水草の越冬芽などを採食するハジロ属のキンクロハジロ,ホシハジロ,そして潜水して水草などを採食するクイナ科のオオバンであり,これら6種で琵琶湖の湖岸で越冬する水鳥個体数の約4分の3を占めるまでになっている.いずれの種も,1994年から2007年までの13年間で,特に北湖での増加が著しい.また,東アジア個体群の個体数が推定されていないオオバンを除いた,これら5種すべてにおいてラムサール条約の1%基準値を超えている.
このような増加をもたらした一因として,琵琶湖における沈水植物の異常繁茂が考えられる.近年,特に南湖ではほぼ全域において高密度の沈水植物群落が広がり,北湖の湖岸でも広がっている.ただし,オオバンの多い湖岸は必ずしも沈水植物群落の分布と対応していない.また,この13年間の個体数の急増は,繁殖地や他の越冬地での環境変化とも合わせて考えないと説明できないほどの増加である.琵琶湖で越冬するオオバンの繁殖地や渡り経路,採食生態の解明が必要と考えている.
[JOGA第11回集会「急増するガン・ハクチョウ・カモ類の原因や影響を巡る鳥学的課題」2009年9月21日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg014f.htm
2009年8月27日掲載,
JOGA.