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JOGA
JOGA12
(2010a)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」

講演2

ハクチョウ類の成幼比と繁殖地の気候の関係

神山 和夫(バードリサーチ)


図1
写真 オオハクチョウの成鳥と幼鳥.

 初めて越冬期を迎えるハクチョウ類の幼鳥は灰色がかった羽色をしているため成鳥と区別することが可能であり、成鳥と幼鳥を分けてカウントすることが全国各地で長期にわたって行われている。日本白鳥の会が行っているハクチョウ調査のデータを用いて、幼鳥率のモニタリングを行う意味と手法について検討を行った。

 長期の調査がされている青森県のオオハクチョウの幼鳥率と、衛星追跡で判明している繁殖地近くに位置するロシアの Cokurdah の平均気温を比較したところ、越冬期直前の5月の平均気温と幼鳥率とのあいだに正の相関があることが分かった。繁殖地の気温が高ければ食物資源が豊かになりヒナの生存率が上がると考えられるため、日本の越冬地の幼鳥率は繁殖成功率の指標として利用できる可能性が高い。このことから、継続的に幼鳥率をモニタリングすれば、ハクチョウ類の増減傾向を理解するための手がかりなると考えられる。

 しかし、幼鳥率を調べるにはいくつか注意すべき事がある。青森県のオオハクチョウの記録からは、月を追うごとに幼鳥率が下がっていく様子が見られる(図2)。これは幼鳥の羽が白く変わることや、あとから成鳥が移動してきていることなどが理由ではないかと思われる。また地域によっても幼鳥率は異なっている。(図3)。さらに群によって幼鳥数が異なるため、ある程度のサンプル数を数えなければ正しい幼鳥率を得ることはできない。時期と場所によっても違うであろうが、2000/01年の青森県のオオハクチョウ調査をのデータからは、最小でも 400羽(12月)、最大では 2000羽(3月)をサンプルしなければ幼鳥数は一定にならなかった。以上のような注意点はあるものの、各地で広く行われている幼鳥率の調査はハクチョウ類の繁殖状況をモニタリングするための貴重なデータであり、著者は各地で連携して行える調査方法の研究と提案をしていきたいと考えている。

図2
図2.月による青森県のオオハクチョウ幼鳥率の変化.

図3
図3.異なる地域でのオオハクチョウの幼鳥率.

[JOGA第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」2010年9月19日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg015b.htm
2010年11月23日掲載,JOGA