[ 重要生息地ネットワーク ] | [ 日本鳥学会 ] | [ 環境省「インターネット自然研究所」 ] |
東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA 第12回集会
2010年9月19日,東邦大学習志野キャンパス
近年、一部のガンカモ類で個体数の増加が報告されている。絶滅の危機に追いやることなく、なおかつ農業被害など人間活動との軋轢を生じない程度に個体数を保つ個体群管理が必要とされている。個体数の増加は、生存率および繁殖成功率の上昇によるものと、他地域からの移入によるものが考えられる。そのため、個体群動態を明らかにし、個体群の状態を把握することは個体群管理を行なう上で重要な情報となる。現在ガンカモ類で行われている個体群動態把握に関する調査研究と、実際に駆除や繁殖抑制の行われているカワウの現状から、今後個体群管理をどのように行なっていけばいいのか、参加者と共に議論したい。
森口 紗千子(国環研)・天野 達也(農環研)・牛山 克巳(宮島沼水鳥・湿地センター)
2010年9月19日(日) 1800−2000.
東邦大学習志野キャンパス(千葉県船橋市)[会場:理学部Ⅴ号館2階 5209 教室]
(18−20日に開かれる日本鳥学会2010年度大会の中の自由集会W11として開催).
企画趣旨の説明
ガンカモ類における個体群動態把握の現状
「米子水鳥公園におけるハクチョウへの首環標識調査」
神谷 要(中海水鳥国際交流基金財団)
鳥取県米子市にある米子水鳥公園では、1994年より飛来するコハクチョウに対して発信器や首環標識をもちいて渡りの調査を行っている。現在、通算25個体を捕獲・標識している。このうち、発信器を付けたコハクチョウについては、詳細な移動がわかっているが、首環標識されたものについては、点での観察記録にとどまっている。しかしながら、越冬期の行動観察では、毎年つがい相手を変えた観察例や、10年以上の継続観察など標識でしかえられないデータも得られている。 [ さらに詳しく ... ]
「ハクチョウ類の成幼比と繁殖地の気候の関係」
神山 和夫(バードリサーチ)
日本白鳥の会が行っているハクチョウ調査のデータを用いて、オオハクチョウに関してはロシア繁殖地の気温と日本の幼鳥率との関係を調べ、さらに国内のハクチョウ類生息地で地域や時期による幼鳥率の差があるかを調べた。まず長期の調査がされている青森県のオオハクチョウの幼鳥率とロシア・アムール川上流域の Cokurdah の平均気温を比較したところ、越冬期前の5月の平均気温と幼鳥率とのあいだに正の相関があることが分かった。さらに国内の幼鳥率を詳細に調べると、調査するサンプル数が小さいほど幼鳥率が高くなることや、地域によって幼鳥率に差があることが明らかになった。一方で、飛来時期から時間が経過するにつれて幼鳥率が下がり、時期、年、地域などによる幼鳥率の差が見えにくくなることも分かった。幼鳥率が低下していく理由は幼鳥の羽色が白くなって成鳥と区別しにくくなることが一因と思われる。以上のような結果を基に、幼鳥率について解析可能なデータを得るための調査方法について検討を行った。 [ さらに詳しく ... ]
「標識調査から見た瓢湖のオナガガモの性比と幼成比の月別変化」
本間 隆平(新潟県野鳥愛護会)・千葉 晃(日本歯科大)
新潟県瓢湖で実施中の標識調査に基づいて、2002/03年−2007/08年の6冬季に捕獲したオナガガモの性比及び成幼比の各年における月別変化を調べた。その結果、渡来初期に多い雌・成鳥は渡去する3月に向かって次第に減少するのに対し、雄・成鳥は逆に1月頃から3月にかけて次第に増加する傾向が見られ、越冬期間中に性比が変動していることが分かった。一方、幼鳥では、雌雄とも越冬期間の変動は成鳥ほど明瞭ではなかった。 [ さらに詳しく ... ]
「日本で越冬するマガンの個体群パラメータ推定」
森口 紗千子(国環研)・天野 達也(農環研)・牛山 克巳(宮島沼水鳥・湿地センター)・藤田 剛(東大・農・生物多様性)・樋口 広芳(東大・農・生物多様性)
日本で越冬するマガン個体群を対象とし,ベイズモデルを用いて観察誤差を考慮しながら個体群動態パラメータと真の個体群サイズを推定した.年生存率は成鳥 0.85,幼鳥 0.80 とともに高く,成幼比は平均 0.47 と他の個体群や近縁種と同様であった.世界的に見ても高い年間個体群成長率(平均11%)で今後も増加することが予測され,個体数を適正に管理するには駆除や繁殖抑制といった個体数調整の必要性が示唆された. [ さらに詳しく ... ]
鳥類における個体群管理の現状
「カワウにおける個体群管理の現状」
熊田 那央(筑波大・生命環境科学)
近年個体数が急増したカワウでは、個体数管理を目的とした方法も含め、様々な対策が行なわれており、鳥類で初めて特定鳥獣保護管理計画の対象種となっている。今回の発表ではこれまでのカワウの個体数変化と人間社会との軋轢、対策などを紹介する。特に法律改正による狩猟鳥化や、滋賀県琵琶湖で行なわれたエアライフルによる捕獲、山梨県のコロニーにおける繁殖抑制などについて、その手法や効果などを具体的に紹介したい。 [ さらに詳しく ... ]
総合討論
[ 重要生息地ネットワーク ] | [ 日本鳥学会 ] | [ 環境省「インターネット自然研究所」 ] |
URL: http://www.jawgp.org/anet/jg015.htm
2010年7月29日掲載,2010年11月23日更新(
各講演の要旨掲載),JOGA.