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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・ 「ガンカモ類重要生息地における保全状況の過去10年の進展と今後の課題」2004年9月18日 |
10年前に雁を保護する会が「ガン類渡来地目録」(宮林編 1994)を出版し,その中で主要なガン類の渡来地の多くがさまざまな問題を抱えていることを指摘した.また,同じ年に日豪渡り鳥協定に基づく取組みとして釧路ワークショップ(Wells & Mundkur 1996)が開かれ,その成果として「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」(Wetlands International 1996, 2001)が築かれてのちの1999年に発足する「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」の基礎となった.
この10年間にガンカモ類にとって重要な生息地における保全状況がどのように変化してきたのか,つまりどのような取組みが進められ,どのような成果に結びついているのか,その一方でどのような課題が残されているのか,あるいは新たに出てきたのか,代表的な生息地における保全活動,あるいは調査研究に携わる方々に事例紹介いただいて今後必要とされる取組みについての議論を深めたい.
テーマ「ガンカモ類重要生息地における保全状況の過去10年の進展と今後の課題」
企画代表者 宮林 泰彦
(ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・鳥類学研究者グループ(JOGA))
日時 2004年9月18日(土)18:00-20:00
奈良女子大学(奈良市北魚屋西町)・F会場
(17-20日に開かれる日本鳥学会2004年度大会の中の自由集会M6として開催)
背景紹介『ガン類渡来地目録の編纂から10年』宮林 泰彦(雁を保護する会)→ 要旨
ガン類渡来地目録の編纂の経緯とその意義,目録後の発展について簡便にまとめた.第1版の意義のひとつは,日本全国におけるガン類渡来地の状況を概括表にとりまとめて,その全体像を解析する試みをおこなったことであろう.これによって,各地で共通する課題が明らかになり,関係する各地の人々が相互に協力するといった取り組みの契機となった.
今後の課題を明確にするためには,日本全国の渡来地の現状を集約して解析する必要があろう.さらに,この10年間に各渡来地ではどのように保全状況が進んだのか,あるいは進まなかったのか,それは何故なのかを把握し分析することも重要な示唆を与えてくれるに違いない.
事例報告1『雁類渡来地目録第1版後の琵琶湖湖北地方における10年間と今後の課題』須川 恒(琵琶湖ラムサール研究会)→ 要旨
事例報告2(宮島沼での取り組みの進展と今後の課題)牛山 克己(美唄市)
事例報告3『新潟平野の主な湖沼でのガンカモ類生息状況と保全の取り組み』佐藤 安男(佐潟水鳥・湿地センター)→ 要旨
《討議》事例報告以外の渡来地の情報をフロアーからも提供いただくとともに,今後必要とされる保全努力や,それらに対するガンカモ類研究者の貢献の方向性などについて.
米子水鳥公園 神谷 要 さん
中海の水鳥の調査では、琵琶湖より調査の方法を学び、10年続けてくることができた。これは、島根県・鳥取県・ホシザキグリーン財団の金銭的支援と地元の積極的参加のおかげである。
中海は、まだ保全計画の策定がなされていないが、これには、多くの人や市民の参加が必要であることがわかった。
片野鴨池 田尻 浩伸 さん
当初鴨池は、ラムサール条約登録後も,地元住民の関心が鴨池保全の方向になかなか高まらないという現象があった。現在は、地元の研究者から市民への呼びかけにより広がりが見えつつある。
また、鴨池周辺の水田は、田んぼに水を張るという活動への住民参加など新たな保全への取り組みが見られるようになった。
保全計画については、ラムサール条約の指針に沿ったものをめざして現在作成中である。
伊豆沼 嶋田 哲郎 さん
伊豆沼はラムサール条約の登録湿地への指定は古いが、ラムサール条約のワイズユースの理解が広がっていなかった。近年、近くの蕪栗沼周辺の活動に触発されて、地域の意識や、財団の組織の意識が変わりつつあることを感じる。
宍道湖 中村 雅子 さん
宍道湖では、調査や環境教育などを多くの活動を行ってきたが、今回の自由集会では、フライウェイのおのおのの湿地での活動や問題点が知ることができてよかった。
ウトナイ湖 大畑 孝二 さん
ウトナイ湖では、大きな開発問題であった千歳川放水路計画が1999年に中止となり、環境省の野生鳥獣保護センターもできた。
琵琶湖 村上 悟 さん
この十年、各地での保全活動を見てきてつくづく感じることは、「人と人との対話が重要」であり、住民との直接の対話が重要であることがわかった。
そのような意味で、フライウェイという言葉をわかってもらうには、もっと一般市民にわかりやすい言葉が必要では、と思った。たとえば、「水鳥の駅」とか「水鳥のステーション」とか・・・
このような形からネットワークとして調査を全体で進めていくことなどが重要だと思う。
荒尾 稔 さん
環境省インターネット自然研究所「全国ガン・カモ類飛来情報」等のデータをまとめた資料を紹介。
《まとめ》須川 恒 さん
雁渡来地目録の概括表で、まとめられているのは53箇所。渡来地の数は概括表として1ページに掲載される数としてちょうど適当で、日本の雁類の渡来状況や渡来地が抱えている問題(それは日本の湿地がかかえる問題でもある)が一望できる効果を持ち、雁類渡来地目録はその後の十年間の湿地保全に役立つ道具となった。
その後、環境省によってシギ・チドリ類渡来湿地目録がつくられ、今後もガンカモ類渡来地目録がつくられるさきがけともなっている。
行政ベースで作成される目録も重要だが、NGOや研究者の視点で作成される目録も今後なお重要であり第2版作成が重要と考える。
当面重要な課題は、雁とその渡来する湿地の重要性や、渡来地でここ10年起こったことを適切にまとめて、地元に対してもまた対外的にも、今回のようにパワーポイントなどを使って今後の課題などを説明できる人(語り部)を各地に育て増やすことだと考える。
JOGAの鳥学的課題(第2稿)
第1回集会(1999)「日本のガン・カモ・ハクチョウ類の個体群の現状」
第2回集会(2000)「日本のガン,カモ,ハクチョウ類の環境利用」
第3回集会(2001)「越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動の観察」(その1)
第4回集会(2002)「水田農業とガンカモ類 〜「対立から共生へ」その鳥学的戦略〜」
第5回集会(2003)「極東におけるガン類・ハクチョウ類個体群フライウェイ解明のための課題」
第6回集会(2004)「ガンカモ類重要生息地における保全状況の過去10年の進展と今後の課題」(このページ)
第7回集会(2005)「ガンカモ類の個体数の継続的調査 モニタリングサイト1000 − 2004年度の報告と課題」
第8回集会(2006)「希少雁類復元・回復計画の経過と意義・今後の課題」
第9回集会(2007)「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFパートナーシップ)の発足と協力」
第10回集会(2008)「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」
第11回集会(2009)「急増するガン・ハクチョウ・カモ類の原因や影響を巡る鳥学的課題」
第12回集会(2010a)「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」
第13回集会(2010b)「希少亜種シジュウカラガンと大型外来亜種カナダガンをめぐる最新報告」
第14回集会(2011)「東日本大震災の湿地への影響をガンカモ類などの調査を通してどう把握するか」
第15回集会(2012)「ガンカモ類のフライウェイ研究と地域個体群の認識・保護計画」
第16回集会(2013)「羽田健三業績レビューと今後の展望 — ガンカモ類の形態を中心に」
第17回集会(2014)「カモ科鳥類と水草の関係性を探る」
第18回(JOGA後援): IOC26: RTD06 (2014)「東アジアにおける水鳥類モニタリングデータの共有プロジェクト」
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このJOGAページは「「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.2004年9月4日掲載, 10月4日更新.