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ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA
第6回集会 事例報告1

雁類渡来地目録第1版(1994)後の琵琶湖湖北地方における10年間と今後の課題

須川 恒 清水 幸男 ※※西村 武司 ※※村上 悟

琵琶湖ラムサール研究会
※※琵琶湖水鳥・湿地センター/湖北野鳥センター

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【要旨】

 湖北地方は1950年代以降雁類(亜種オオヒシクイ)の南限の、近畿地方で唯一の渡来地となった。
 雁類渡来地目録(1994)では、湖北地方の渡来地に関して、1980年代の密猟、湖岸堤建設、補助金獲得のための西池の一部の破壊、1990年代初頭の渡来数の激減情報などを記載した。関係者はこのままでは、「湖北地方はかつては雁類の南限の渡来地だった」となってしまうのではと憂慮した。
 一方で、渡来地保護にむけての手がかりもあった。1987年にカムチャツカ発の標識雁が湖北に初飛来し、1988年に湖北野鳥センターがオープン、1992年に滋賀県がヨシ群落保全条例を制定、1993年カムチャツカからゲラシモフ親子が湖北を来訪、また琵琶湖はラムサール条約登録湿地になった。

 1994年以降の雁類渡来地に関する動きの中では、1994年5月に琵琶湖水鳥・湿地センターが環境庁・湖北町により開設されたことが大きい。雁類渡来地目録は、湿地センターを湖北地方に誘致する際に、関係者に当地の意義を明らかにする上で大きな役割を果たした。
 憂慮していた滋賀県北部のオオヒシクイの渡来数の減少はその後回復し、コハクチョウは徐々に増加した。清水らのオオヒシクイの記録を村上が中心になって解析した結果(村上他、1999)、寒い冬は北から南下し、琵琶湖の水位が低いと湖岸が利用しやすく渡来数が多いことが判った。
 カムチャツカ発の標識個体は毎冬渡来し、2003-4年冬までに計38羽、延べ63羽(冬)が確認され、標識後10年経過している個体も確認された。
 ロシアの研究者との交流は続いている。1995年湖北町長とN. Gerasimov氏との間で交流に向けての手紙が交換され、1997年N. Gerasimov夫妻がセンターを表敬訪問した。1998年Y. Gerasimov氏の講演会があり、翌夏1999年湖北を代表して村上がズベズドカン湖の調査に参加した参照。その後もロシア人研究者の来訪は続き、地元小学校での講演やボルシチ作りなど交流活動が行なわれている。また、2001年には日本白鳥の会の総会が湖北で開催された。
 最近は、池の整備や道の駅建設など、渡来地にかかわる事業が行なわれる際も、関係者とのうちあわせが事前に充分おこなわれるようになった。また、びわ町の早崎内湖干拓地では、2001年11月から17haのビオトープ水田実験がおこなわれ、200羽のコハクチョウが渡来するようになっている参照
 湖北野鳥センター琵琶湖水鳥・湿地センターでは多彩な活動が行なわれている。ホームページ参照などを通して野鳥情報を積極的に発信し、湖北地方の観光活動ともリンクし、センターには年間30,000人以上が来訪するようになっている。観察会や鳥のおはなし会などの行事も毎月開催され、環境教育学習の場として多くの小学校が利用している。
 ラムサール条約の普及啓発のために、琵琶湖ラムサール研究会の活動として湿地センターのホームページにラムサール条約関係の文書やその解説が閲覧できるようにし、また冊子も出版しており、全国の関係者に利用されている。

 今後の課題として以下の3点がある。
①オオヒシクイの生息環境の一層の保全をはかること
 鳥獣保護区・銃猟禁止区域を拡大、鉛散弾の規制範囲を拡大し、琵琶湖レジャー適正化条例(2003年4月施行)によりプレジャーボート航行規制区域を設置する必要がある。ビオトープ水田はオオヒシクイにとってもあらたな採食地とする工夫が必要であろう。
②琵琶湖全湖岸域の湿地保全活動との連携
 毎年1月中旬に、県ガンカモ類一斉カウント調査に協力して、びわ町〜湖北町湖岸をセンター関係者が中心となって調査しており、この区間は琵琶湖湖岸域で最多区間であることが判明しているが、他の区間の調査努力量は低い。琵琶湖全域のガンカモ類の規模・分布を評価できる調査は、1989年・1994年以降なく、環境省モニタリングサイト1000の調査なども活用して、琵琶湖全域のガンカモ類の個体数や分布を適切に把握することが重要である。また、他の琵琶湖湖岸域の水鳥保護や湿地保全活動と連携していく必要がある。
③湿地保全と雁類渡来地保護に関心を持つ人々を幅広く育てる
 足元の水鳥だけではない多様な湿地のいきもの、湿地活用産業、伝統文化について調べ体験して、多くの人々が発信していく活動が大切である。このためには、まずセンター関係者が率先して蓄積された情報をまとめ発表していく必要がある。「渡来地目録」の更新や、「雁のたより」などの雁類にかかわる全国的情報連絡活動は、雁類や渡来地となる湿地に関心を持つ人々を幅広く育てるために重要である。

文献

[JOGA第6回集会「ガンカモ類重要生息地における保全状況の過去10年の進展と今後の課題」2004年9月18日]

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このJOGAページは「「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.2004年9月12日掲載, 9月13日更新.

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