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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」
講演5
熊田 那央(筑波大・生命環境科学)
1980年以降個体数が急速に増加し、放流魚の採食などが問題とされるようになったカワウは鳥類で初めて特定鳥獣保護管理計画の対象種となり、様々な対策が行なわれている。以下最近行なわれた試みをあげる。
2007年度より狩猟鳥となった結果、関東地域では前年よりもほぼ倍の 3000羽が捕獲された。しかし、個体数は 15000羽程度と前年との大きな変化はみられなかった(自然環境研究センター 2009)。個体数は減少しなかったにもかかわらず、狩猟が行なわれている地域の漁業組合ではカワウの飛来が減った、もしくは増えなかったとした漁協の割合は狩猟が行なわれていない地域の漁協に比べ多かった(自然環境研究センター 2010)。
滋賀県では、毎年 15000羽前後捕獲を行なっていたが個体数が減少しなかったため、散弾銃の捕獲よりも効率の良いエアライフルによる捕獲を新たに試みた。その結果捕獲数が増加し、2004年以来初めて秋期個体数が 40000羽以下となった。一方で、捕獲を行なわなかった年に一度 70000羽まで増加した時も冬期に 30000羽前後まで個体数は減少しており、冬期の自然死亡数も相当多いといえる(滋賀県 2009 図)。
図1.滋賀県の個体数と駆除数.平成21年秋期カワウ生息状況調査結果および平成21年カワウ捕獲結果の概要より作成.
山梨県の富士川水系にある繁殖地では、偽卵との交換、ドライアイスによる卵の殺処理を併用することによってコロニー内の孵化率をほぼ0%まで抑えることができるようになった(坪井・桐生 2007)。これは、繁殖期と放流魚採食の被害時期が重なっている内陸部のコロニーでヒナに与える魚の量を直接抑える事ができる有効な方法である一方で、繁殖率をこのように低い値に抑えるには高いモチベーションをもった人が継続して行なう必要があり、人的コストと繁殖地への撹乱は相当大きい方法であるといえる。
カワウにおいては、日本全体の個体群管理方法やその方針が定まっているわけではないが、個々の繁殖地や地域において行なう具体的な個体数管理手法の確立とその特徴の把握が行なわれつつあり、対策を行いたい場所に適した方法を選択可能となってきた段階である。
参考文献
謝辞
発表にあたり、NPO法人バードリサーチの高木憲太郎氏をはじめ、イーグレットオフィスの須藤明子氏、山梨県水産技術センターの坪井潤一氏など多くの人に貴重な資料や意見を頂いた。皆様に厚くお礼申し上げます。
[JOGA第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」2010年9月19日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg015e.htm
2010年11月23日掲載,JOGA.