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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第13回集会「希少亜種シジュウカラガンと大型外来亜種カナダガンをめぐる最新報告」
講演2−3
○葉山 久世(かながわ野生動物サポートネットワーク)・石井 隆(日本野鳥の会神奈川支部)
これまでの自然保護団体の取り組みとしては、丹沢大山総合調査(2004−2005年)の結果を受け「カナダガンの早期の捕獲」は緊急性が高い事業として提言された(丹沢大山総合調査実行委員会.2006)。また、2004年10月に釣り糸被害の傷病鳥として保護された丹沢湖のカナダガンについて、治療後は施設での終生飼育か放鳥する場合はカラーリングを装着することを勧めた。2007年8月に丹沢湖で足を引きずったカナダガンの情報が寄せられたことから、カナダガンを取り巻く状況を整理し今後の対応提案をチラシにまとめるなどした。
2009年8月、丹沢湖の生息しているカナダガンを捕獲した場合、国内の動物園などへ飼育の可能性について打診したところ、二園から協力の申し出があった。このことにより、2010年2月に「カナダガン捕獲大作戦」を実行する運びとなった。捕獲に際し、鳥獣捕獲許可の申請や土地利用の申請、捕獲にあたるスタッフの確保、地元自治体への説明、地元住民への理解を求めるチラシ作成・子どもたちへの普及活動など、さまざまな手続きを行ったのでここに報告する。
神奈川県はこれまでアライグマの防除実施計画策定等で安楽殺を伴う対策に批判が寄せられ苦慮した経験を持っている。このことから、私たちは捕殺による処分を最小限にすること、つまりカナダガンでは一刻も早い対応が成功の1つのカギと予測している。
今後の取り組みは、目視による生息数調査と生態調査による情報を収集しながら地域の人への啓発普及、自治体への働きかけ、合意形成に必要な情報の提供などが考えられる。
カナダガンの問題には、生物多様性、稀少種の保護、外来種、動物の福祉、公衆衛生、人と動物の関係、展示動物の管理の問題が含まれている。生物多様性は土地固有のものであり、他地域からの外来生物では代替えできない。野生動物と人の複雑化する関係性への適切な対応は容易でないがここは粘り強く関わるしかない。まずは地元自治体や関連する方々に関心を持ってもらうこと、次いでこの問題を一緒に考えてもらうことが目標だ。誰かが声を上げないと何も始まらない。民間でできることからと始めた「捕獲大作戦」がこれらのきっかけになれたなら、たいへんにうれしく思う。
[JOGA第13回集会「希少亜種シジュウカラガンと大型外来亜種カナダガンをめぐる最新報告」2010年9月18日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg016d.htm
2010年9月4日掲載,JOGA.