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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第16回集会「羽田健三業績レビューと今後の展望 — ガンカモ類の形態を中心に」
講演2
小木曽 チエ(愛知県弥富野鳥園展示標本作製担当スタッフ)
カモ類に、膨らんだ鳴管があるということはすでに伝えられているが、どの種のカモにあるのか、また雌雄による違いがあるのかなど不明瞭な点があった。今回、猛禽類の食痕となった個体を含むカモの斃死体から鳴管を採集し、大きさと形状についてまとめてみた。また雌雄による鳴管の膨らんだ部分の有無について、精巣または卵巣が確認できた個体での比較をした。
種名 | 形状 | 大きさ(H×W×D(mm)) |
オシドリ | 球状 | 23×12×22 |
ヒドリガモ | 球状 | 22×16×16 |
マガモ | 球状 | 26×17×16 |
カルガモ | 球状 | 21×11×12 |
ハシビロガモ | 球状 | 13×10×10 |
オナガガモ | 球状 | 21×13×13 |
コガモ | 球状 | 13× 8× 8 |
ホシハジロ | 円盤状 | 26×21×11 |
キンクロハジロ | 円盤状 | 23×18×10 |
スズガモ | 円盤状 | 28×23×11 |
ウミアイサ | 大型鼓室 | 45×27×34 |
オシドリ1羽、ヒドリガモ3羽、マガモ1羽、カルガモ2羽、ハシビロガモ2羽、オナガガモ5羽、コガモ4羽、ホシハジロ5羽、キンクロハジロ3羽、スズガモ3羽、クロガモ1羽、ウミアイサ1羽の12種31羽の鳴管の観察をした。その中で鳴管に膨らんだ部分があった、オシドリ1羽、ヒドリガモ2羽、マガモ1羽、カルガモ1羽、ハシビロガモ2羽、オナガガモ4羽、コガモ2羽、ホシハジロ2羽、キンクロハジロ3羽、スズガモ1羽、ウミアイサ1羽の鳴管の形状と大きさを調べた。同種が複数個体あるものは平均値をとった。
膨らんだ鳴管は、種によって大きさ、形状の変化が見られた。
鳴管に膨らんだ部分があった、オシドリ1羽、カルガモ1羽、ハシビロガモ2羽、オナガガモ1羽、コガモ2羽、キンクロハジロ1羽、スズガモ1羽の7種9羽において精巣があり、鳴管に膨らんだ部分がなかった、オナガガモ1羽、コガモ2羽、ホシハジロ1羽、キンクロハジロ1羽、スズガモ2羽の5種7羽において卵巣があった。
クロガモ♂は、鳴管に膨らんだ部分がなかったことが確認された。
オナガガモ♀ (同)♂ |
オシドリ♂ |
キンクロハジロ♂ |
鳴管は採集した鳥の状態が悪く、腐敗や乾燥が進んでいても残っている場合が多い。種による鳴管の有無、大きさ、形状のデータをまとめていくことで種や雌雄の判断の際のひとつの目安になり、フィールドでの斃死鳥や食痕となった個体の調査においても役立つものと思われる。鳴管の大きさや形状の変化が声の大きさや鳴き方に関連するのか、また雌雄の行動の違いに関係があるのか、この形態観察から得た情報を元に生態観察を行う際のポイントにしていきたいと思う。
[JOGA第16回集会「羽田健三業績レビューと今後の展望 — ガンカモ類の形態を中心に」2013年9月14日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg019b.htm
2013年8月27日掲載,2013年9月2日更新,JOGA.