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JOGA
JOGA8
(2006)

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第8回集会「希少雁類復元・回復計画の経過と意義・今後の課題」
報告4

東アジアにおけるハクガン(Anser caerulescens)の復元計画の現状と課題

佐場野 裕(日本雁を保護する会)


アジアに唯一残されたウランゲル島の繁殖個体群を保護し、東アジアで繁殖、越冬する個体群を復元するためのハクガン復元計画が、国際共同計画として1993年より実施されている。

第一段階での本計画の目的は、次の2点にあった:

  1. いくつかの復元方法を試行し、ハクガン復元計画実施方法を開発する。
  2. 北東アジアにおけるガン類の基礎調査。特に、ハクガンの里親となるマガンの渡り経路の解明と、北東シベリア北極圏沿岸部でのハクガンの生息状況を調査する。

目的1については、1993年に、ウランゲル島で採取されたハクガンの卵100個を北東シベリアのアナドゥリ低地に移送し、マガンを里親とする仮親法と、マガンの換羽地でハクガン幼鳥を放鳥する方法の二つの方法を実施し、両者について良好な結果が得られている。幼鳥放鳥の場合は足環標識が施されているが、1996年夏には、アナドゥリ低地から南に100離れた地点で、標識付きのハクガンが番形成し、幼鳥4羽を含む家族群でいるのが確認されている。

越冬地である日本と韓国においても、標識付きのハクガンがそれぞれ1例づつ観察されている他、1993年を境として、ハクガンの越冬数が顕著な増加を示していることも本計画の結果であると推定される。

目的2についても、1994年に伊豆沼で越冬するマガンへのPTTを含む標識調査で春季の渡り経路が解明されたことや、アナドゥリ低地・コリマ低地における調査で、北東アジアのガン類のついて得られた知見は多い。

下図は、日本雁を保護する会が把握できた最近33年間のハクガンの飛来状況をまとめたものである。ハクガン復元計画が開始された1993年以前の22シーズンについてのハクガンの出現頻度は 0.36羽/年であるが、本計画がスタートした直後の1993/1994冬期に急増し、その後着実に増加していることがわかる。また、近年は幼鳥を含む家族群が越冬するようになっている。

図.ハクガンの越冬個体数の変化.

[JOGA第8回集会「希少雁類復元・回復計画の経過と意義・今後の課題」2006年9月15日]

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このJOGAページは「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.URL: http://www.jawgp.org/anet/jg011d.htm.2006年8月30日掲載.

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