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JOGA
JOGA8
(2006)

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第8回集会「希少雁類復元・回復計画の経過と意義・今後の課題」
報告3

野生シジュウカラガンの羽数回復事業

阿部 敏計(仙台市八木山動物公園)


仙台市八木山動物公園は、ロシア科学アカデミーカムチャッカ太平洋地理学研究所並びに日本雁を保護する会と共同で、極東地域で絶滅の危機にあるシジュウカラガン(Branta canadensis leucopareia)の羽数回復と渡りの復元を目的に、旧来の繁殖地であった北部千島列島のエカルマ島の調査と、同島への飼育下繁殖個体群の放鳥を実施してきた。

八木山動物公園では、この事業遂行のため1983年にアメリカ合衆国から9羽のシジュウカラガンを借り受け、以来飼育下での繁殖に努めてきた。八木山動物公園で繁殖した個体群から合計62羽を1994年から2003年までにカムチャッカにあるロシア科学アカデミー付属のシジュウカラガン繁殖施設に送った。それらは、1992年にアメリカ合衆国から供与された19羽のシジュウカラガンを元とするロシア側の飼育個体群と番い形成させ繁殖させることにより、放鳥個体群形成に寄与した。

1995年から2000年まで、夏に通算6回エカルマ島で実験的に繁殖地放鳥と調査を行い、合計119羽を放鳥した。カムチャッカの繁殖施設からエカルマ島まで、大型ヘリコプターで運搬した。実験では毎回個体数と年齢構成を変化させ、最小で12羽から最多で33羽の群れとして放鳥した。
 調査の結果、エカルマ島にはシジュウカラガンの生息に有利な自然環境が維持されており、キツネなどの捕食性動物の存在も否定的であった。
 実験放鳥の結果、わが国への渡りが見られたのは、1997年の4羽と1999年の1羽の計5羽のみで、全て2歳未満の個体であった。越冬中に死亡した1羽を除いた4羽は越冬後の北帰が確認されたが、その他の放鳥個体も含めエカルマ島への帰還は確認されず、それらのものと考えられる採食痕が島内で発見されただけであった。

6回の実験放鳥から、飛翔経験の乏しい2歳未満の個体をより大きな群れで放鳥することによって、越冬のための南下が促されることが示唆された。
 そこで、2歳未満の個体を50羽程度の群れで、2002年から2005年まで、夏に通算4回合計220羽と2006年には5月に産卵前の繁殖適齢個体37羽の本格的放鳥を行った。
 その結果、2002年の2羽と2005年の11羽の計13羽がわが国へ渡って来た。このことにより、2歳未満の大きな群れでの放鳥が有効であることが確認された。

1995年からの繁殖地放鳥実施により、わが国へのシジュカラガンの渡来数は確実に増加している。しかし、アメリカ合衆国が羽数回復に30年を費やしたことからしても、極東アジアでも羽数回復にはもっと長い期間を要すると考えられる。

仙台市HP「野生シジュウカラガンの羽数回復事業」

 今後は、繁殖地放鳥を更に12年ロシア側が単独で実施する予定である。宮城県に群れでシジュウカラガンが渡来するようになったら、八木山動物公園飼育下繁殖個体を群れに同化させる越冬地放鳥を実施予定である。また、仙台平野への冬期湛水田事業の普及も行っていく予定である。

[JOGA第8回集会「希少雁類復元・回復計画の経過と意義・今後の課題」2006年9月15日]

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このJOGAページは「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.URL: http://www.jawgp.org/anet/jg011c.htm.2006年8月12日掲載.

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