[ 重要生息地ネットワーク ] | [ 日本鳥学会 ] | [ 環境省「インターネット自然研究所」 ] |
|
東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA 報告5 新潟県瓢湖におけるカモ類の雑種について本間 隆平(新潟県野鳥愛護会)・千葉 晃(日本歯科大学・新潟) |
「白鳥の湖」として有名な新潟県瓢湖には、毎冬、ハクチョウ類・約 3,500羽、カモ類・約 15,000羽(マガモ・3,000、カルガモ・150、コガモ・5,000、オナガガモ・4,000、ホシハジロ・250、キンクロハジロ・250など)が渡来している。瓢湖は寛永16年(1639)に造られた約9㏊の農業用水だったが、1990年頃から増加しはじめたカモ・ハクチョウ類の生息環境を整備するため新たに3つの池を造成し、2000年、30.4㏊の瓢湖水禽公園が完成した。ここに渡来する多数のカモ類に混じってオナガガモやマガモの性異常個体のほか、種間雑種が現れた。オナガガモ×トモエガモ(雄)は少なくともこれまでに4例あり、そのうち2004年に現れた1個体については配偶行動に関する調査を行った。また、2007年にはヨシガモ×ヒドリガモ(雄)が渡来し、更にアヒル×カルガモ(雄)3羽も観察された。後者については当初マガモ×カルガモと考えていたが、至近で細部を検討した結果、瓢湖で生活しているアヒルとの交雑である可能性が濃厚になった。
瓢湖は1954年に餌付けに成功してから水原町が毎日3回(午前9時・11時・午後3時)給餌を行ない、コブハクチョウやコクチョウを導入し、ハクチョウ保護と観光両面から瓢湖を管理してきた。コブハクチョウは数年にわたってヒナが生まれたものの次第に数が減り、2003年頃には絶えてしまい、コクチョウは希に動物園から逸走した個体が姿を見せるが、増えることなく数年で絶えてしまった。
水原町では管理事務所が与える1日3回の餌以外は給餌を禁止していたが、1995年、この方針を変更し町観光協会が製造・販売する餌を何時でも誰でも与えて良いこととした。このことによって瓢湖は一般見学者や観光客にはこれまで以上に親しまれるようになった反面、持参したパンやポップコーンを与える人が後を絶たず、ニワトリを捨てて行ったり、アイガモやアヒル(ルーアン、マグバイ)、更にはバリケン、ガチョウ(シナガチョウ、トゥールーズ)などまで捨てられたり放されたりして来た。水原町ではそれらを放置してきたが、鳥インフルエンザが問題となり始めた数年前から30羽近くまで増えたバリケン、10羽ほどのニワトリは処分し、捕獲できるアヒルやアイガモは処分してきた。しかし、捕獲できないアヒルやアイガモ数羽が生活し、今季もアイガモ1腹10羽が生まれている。
夏季、瓢湖で繁殖するカルガモは少なくヒナ連れは希にしか見られないが、雄だけのアヒルはアイガモやカルガモの雌を求めて雑種を作る可能性は高い。また、交雑個体が親鳥と配偶関係を持つ可能性は冬季の野外観察で裏付けられている。こうした状況の中でアヒル×カルガモが生まれたものと考えられるが、アヒルやアイガモを放置しておくことは人工的に雑種を作ることを助長し、捕獲できるチャンスがあれば積極的に捕獲し処分する必要を感じている。
[JOGA第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」2008年9月13日]
[ 重要生息地ネットワーク ] | [ 日本鳥学会 ] | [ 環境省「インターネット自然研究所」 ] |
URL: http://www.jawgp.org/anet/jg013e.htm
2008年8月18日掲載,9月9日更新,JOGA.