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JOGA
JOGA19
(2015)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第19回集会「ガンカモ類研究者連携の意義と課題:JOGAの課題再整理」

話題提供2

1%基準値を巡るさまざまな課題

牛山 克己(宮島沼水鳥・湿地センター)


[JOGA19]

話題提供1
「JOGAをはじめた理由とその後の展開」呉地 正行(日本雁を保護する会).
話題提供2
「1%基準値を巡るさまざまな課題」牛山 克己(宮島沼水鳥・湿地センター).
話題提供3
「ついに1000羽を越えたシジュウカラガン越冬個体数」呉地 正行(日本雁を保護する会)
話題提供4
JOGAの鳥学上の課題(2000年)の改訂に向けて」須川 恒(龍谷大学深草学舎)

1)EAAFPについて
 世界に9つあるフライウェイのひとつである「東アジアオーストラリア地域フライウェイ(EAAF)」は総個体数で5千万羽、200種を超える水鳥を支えているとされる。地球規模で絶滅の恐れのある種は35種とフライウェイの中で最も多く、また、個体数が減少傾向にある種も最も多く抱えている。「東アジアオーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)」は、このような重要なフライウェイにおける国際協力の枠組みとして2006年に発足した。
EAAFPは現在、各国政府、国際機関、国際NGOを含む34のパートナーによって構成されている。定期的にパートナー会議(MOP)が開催され、今年1月には釧路でMOP8が開催された。事務局は韓国インチョン市にあり、事務局長以下6名のスタッフおよびインターンによって運営されている。EAAFPには作業計画の実施を支援するワーキンググループ(WG)と、MOPにてあげられた課題に対応するタスクフォース(TF)があり、ガンカモ類に関連したものでは、ガンカモWGのほかコウライアイサTFとアカハジロTFがあり、鳥インフルエンザWG、モニタリングTF、標識TFなどとも密接な連携が求められている。ガンカモWGの座長は呉地さん、国際コーディネータはバードライフの岸本さんの後任として牛山がMOP8において就任した。
 EAAFPはアジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略の重要生息地ネットワークを元に、フライウェイサイトネットワーク(FSN)の構築を進展している。現在は123のサイトがFSNに登録されているが、潜在的に重要なサイトはまだ数多く存在している。国内にはFSNは32サイトあり、ガンカモの重要生息地は20サイト、一部重複するサイトもあるがシギ・チドリ類は11サイト、ツル類は7サイトとなっている。国内のFSNは、環境省のもと、バードライフ・インターナショナル東京が事務局となり、 3つの種群ごとに国内コーディネータがサイトを統括している。
 JOGAはこうしたFSNにおけるガンカモサイトの支援を目的としているが、そのためにもEAAFPに寄り添う形でガンカモWG等との協調と連携を図ることが望ましいと考える。ガンカモWGは、現在改めて各国のメンバーとオブザーバを選任する作業にあたっており、今後作業計画の策定などを進めていくことになるが、ぜひJOGAからのインプットをお願いしたい。

2)1%基準値をめぐるさまざまな課題
 FSNの認定基準のひとつである1%基準値は、現在多くの保護区の選定基準としても採用されるほど広く認知されているが、元は1972年にラムサール条約における国際的に重要な湿地の選定基準としてIWRBのSzijj氏によって初めて提唱されたものである。その後、Atkinson-Willes (1976, 1982)等によってその妥当性が検討され、ラムサール条約COP4(1990)において正式に採用されたが、1%基準値の適用による保全効果と、個体の分布様式、季節消長、地理的スケールなどに関連する課題に関する定量的な検証は長らくされていなかった、と思われる。
 2000年代に近づくと、各種保護区の選定手法や設定後の保全効果に関する議論がされるようになり(例えばPrendergast et al. 1999, Rodrigues et al. 2004, Gaston et al. 2008)、その中でサイト間の補完性を考慮する(Jackson et al. 2004)、バッファー効果を考慮する(Jackson et al. 2004)、日周行動における分布の違いを考慮する(Guillemain 2002)、温暖化への対応を考慮する (e.g. Hannah et al. 2007)必要性などが指摘されるようになり、ギャップ解析など新たな手法も実用化されている。数は少ないが1%基準の直接的な再評価 (Clemens et al. 2010)に関する研究事例も存在するが、今後は保護区ネットワークの機能強化という大きな枠組の中で、1%基準値も含めた基準群を再評価していくことが重要であろう。また、これらの前提となる個体数推定値の重要性については言うまでもなく、国内モニタリングデータのシステマティックなインプットについても言及したい。

[JOGA第19回集会「ガンカモ類研究者連携の意義と課題:1%基準値を巡るさまざまな課題」2015年9月19日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg021d.htm
2015年9月15日掲載,JOGA