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東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第15回集会「ガンカモ類のフライウェイ研究と地域個体群の認識・保護計画」
講演4
澤 祐介(日本鳥類標識協会)・須川 恒(龍谷大学)
ガンカモ類のフライウェイ(地域個体群)認識のためには、直接観察、金属足環による標識調査、カラーマーキングによる調査、衛星発信機などによる調査、さらに形態や遺伝子により地域的変異を研究する手法がある。それぞれの調査研究手法についてはさまざまな利点や課題があり、それらの結果を総合的に活用することで、よりリアルなフライウェイ認識ができる。ここでは金属足環による標識調査と対比させつつ、カラーマーキングによる調査の課題について触れる。
金属足環による標識調査の推進や回収など結果報告は、そうでない国もあるが多くは国が管理して進めており、その点がメリットといえる。一方、カラーマーキング調査は、観察者の多い地域で、金属足環による調査の穴を埋める役割をするが、金属足環による調査と違って、一般に国の機関のかかわりはなく、調査者が観察者への呼びかけや、観察記録の取りまとめをしないとフライウェイ認識につながってこない。
金属足環に関する標識調査については、最近Web-Gisによって日本にかかわる回収記録が見えるようになった。ガンカモ類に関しても多くの回収記録を見ることができる。もっとも、日本にかかわる回収記録だけでなく、隣国にかかわる回収記録を全て見ないと、東アジアのフライウェイ認識にはつながってこない。
ガンカモ類のカラーマーキング調査では、1970年代のソ連の時代に英国のスレイドン氏らがソ連の研究者と協力してはじめたコハクチョウの首輪標識、1980年代に日本雁を保護する会がソ連(ロシア)の研究者と協力してはじめたガン類の日ソ(日露)共同標識調査の結果が、極東アジアにおけるハクチョウ類やガン類のフライウェイ認識に大きな役割を果たした。
カラーマーキング調査を今後ともフライウェイ認識の進展のために役立てる上では、調査者間の調整や、調査者と観察者を結ぶしかけが課題として重要である。また観察記録をどのようにすれば多くの人が見える形にするかも大きな課題となる。
日本鳥類標識協会では、カラーマーキング調査のポータルサイトを立ち上げ、調査者間の混乱を避け、カラーマーキングのついた鳥を発見した観察者が連絡すべき連絡先などの情報が容易に得られるようにしている(ガンカモ類についてはガン類のみで、ハクチョウ類、カモ類は作成中)。ガン類については、首輪情報を入力することによってその個体の観察地点を見ることができるサイトが開かれている。
カラーマーキングについては、東アジアの水鳥についてのポータルサイトが立ち上がっているが、今後さらなる連携関係をとることが課題となっている。
[JOGA第15回集会「ガンカモ類のフライウェイ研究と地域個体群の認識・保護計画」2012年9月14日]
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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg018d.htm
2012年9月9日掲載,JOGA.