冬期湛水水田
プロジェクト

もくじ

あらまし

背景

循環型水田農業の実現

農業共生型ビオトープネットワークの構築

成果

1999年度

1998年度

他地域の例

参考情報

リーフレット

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 循環型水田農業の実現 

冬期湛水水田は,従来の慣行農法の水田でも実施できますが,生き物の生息地としてより質を高めるためには,不耕起(自然耕)栽培の水田で行うと効果的です.不耕起栽培とは,稲刈り後もまったく田を耕さない農法のことです.

不耕起水田は水田農業に一つの理想を提示しています.それは循環型水田農業の実現です.

不耕起水田では,耕起が行われないため,落ちモミが土の中へ隠されてしまうことが少なく,ガンなどの鳥類にとっては耕起水田より食物資源を多く得ることができると期待されます.さらにそこへ水を張ると,食物を水とともに摂取する水鳥にとっては絶好の採食環境が提供されるわけです.また,乾田だらけの現在の水田の中に「オアシス」のような湿地が創出されることにより,休息場所(または塒)としての価値も生まれることが期待できます.


サヤミドロ(水面に浮かんでいる藻類)

飛来した水鳥はたくさんの糞を水田に残します.これは翌耕作期には天然の肥料となります.水の張られた水田では,水田に残っている藁くずやイネ株の分解が進み,分解残留物は春にサヤミドロの栄養源となります.サヤミドロは稲作中に堆肥の代わりとなります.つまり,ほとんど肥料をやらなくても水田耕作が可能となります.

また,飛来した水鳥は,落ちモミだけでなく土中の雑草の種子も食べてくれるので,除草効果も期待できます.

このような環境保全型栽培米は,主に都市部をターゲットに,付加価値のついた米として高く販売することが可能となります.不耕起栽培のイネは,イネの原始的能力が発揮されて生育するため,在来品種より収量が多く冷害に強いと言われています.つまり不耕起栽培によって,農家は農薬や肥料代を抑制することができるだけでなく,安定した収量を得,かつ高く米を販売できるなど,多くのメリットを得ることができると期待されているのです.

慣行栽培のイネ(イネ株がばらけている)

不耕起栽培のイネ(株が太くしっかりしている)

このような環境保全型栽培の水田は,農薬や化学肥料などの影響がほとんどないため,近年生息地が減少しているメダカやヤゴなど水生昆虫類の良好な生息環境ともなります.そして,それらを餌にする鳥類が集まり,糞を落とし...

こうして,不耕起水田では循環型水田農業が実現されるのです(下図参照).