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1999年度のプロジェクト |
1999年度冬は、田尻町内の自然耕(不耕起)栽培研究会の四農家が冬期湛水プロジェクトに参加しました。湛水は12月1日から実施し、湛水する4箇所の水田の面積は、合わせて6.0haと1998年度の約2倍となりました。
水田名 | 水田管理者 | 湛水面積 |
A水田 | 千葉孝志さん | 1.8 ha |
B水田 | 加藤清夫さん | 1.2 ha |
C水田 | 渡辺仁公さん | 1.0 ha |
D水田 | 小野寺実彦さん | 2.0 ha |
合計 | 6.0 ha |
プロジェクトの成果 |
冬期湛水水田での水鳥の利用状況を明らかにするために、11月19日〜翌年2月27日まで原則3日間隔で個体数調査を実施するとともに、12月22日にはマガンの行動調査も実施しました。
湛水してまもなく、水田にはコハクチョウやマガンが飛来しました。
12月3日 D水田を利用するマガン8羽 | 12月4日 A水田を利用するコハクチョウの群れ |
越冬期を通じた、冬期湛水水田での水鳥の確認個体数を、図1に示しました。飛来が確認されたのは、コハクチョウ、オオハクチョウ、そしてマガンの3種類です。このほか、水田に落ちている羽根から、オナガガモと思われるカモも夜間に湛水水田を利用していることが明らかとなりました。
図1.冬期湛水水田における水鳥の個体数変動(1999-2000)
結果をまとめると次の通りです。
コハクチョウ
調査期間の初期(晩秋季)と終期(早春)に個体数のピークがある双山型を形成しています。おそらく、蕪栗沼に飛来するコハクチョウは、その多くが越冬地がもっと南にあり、秋と春の渡りの時期に中継地として蕪栗沼を訪れているようです。図1の双山形は、それを反映したものと考えられます。最大利用確認数は、11月25日の236羽でした。
オオハクチョウ
厳冬期を中心に、調査期間を通じて利用が確認されました。厳冬期に利用が多いのは、オオハクチョウの主要食物資源であるマコモ根茎部の摂食が、結氷により困難となり、食物を求めて周辺水田へ移動するためと考えられます。最大利用確認数は、12月31日の72羽でした。
マガン
時々、突出的に群れが訪れ水田を利用しました。その飛来パターンから、マガンは湛水水田に対して執着的でないことがうかがえます。しかし、その行動を詳しくみることによって、湛水水田の存在意義が明らかとなりました。最大利用確認数は、12月22日の440羽でした。
マガンの利用が最大となった12月22日に実施したマガンの行動調査結果を、図2に示しました。これは、周囲に乾田のある湛水水田に飛来した約800羽のマガンの行動を、乾田と冬期湛水水田とに分けて各々割合で示したものです。
図2 マガンの行動調査結果
表1 マガンの利用個体数 |
◇結果をまとめると次の通りです◇
湛水水田に隣接する乾田で、主に採食を行っていました。
採食が終わると群れは湛水水田に移動し、ここで休息や水飲み、羽繕い、背眠を行いました。しばらく休息すると、再び乾田へ移動して採食を始めました。このような行動を、一日中繰り返していました(表1)。
本来、マガンは水田で採食を終えると、蕪栗沼などの沼へ戻って、そこで休息をし、しばらくして再び採食に出かけるという行動を繰り返すことが知られています。
このことから、マガンは湛水水田を「沼」の代替地として利用していることがわかりました。
これは、ガンのねぐらや休息地となる湖沼がない場所でも、水田に湛水することによってその代替とし、ガンの生息環境を取り戻すことが可能であることを示唆しています。